ニューヨークの建築、アートめぐり(1,2日目)
2015年12月31日〜2016年1月6日まで、ニューヨークに建築とアートを求めて旅行をした。年末はロシア・トルコ間で折衝があり、パリでISISによる同時テロが発生したりと国際情勢が不穏な中での旅だったので、同行する妻との約束事として①18時以降出歩かない ②年越しのタイムズスクエアやコンサートホールなど人が集まるところはできるだけ避ける...
View Articleニューヨークの建築、アートめぐり(3日目)
3日目は僕と妻の共通の友人で、ボストンに住むきょうこ氏とノイエ・ガレリエにて合流する予定となっていた。ノイエ・ガレリエの開館時間は11時、それまでの間、ホテルからグランドセントラル駅まで街を歩くことにした。Seagram Building / Mies van der Rohe, Philip Johnson (1958)...
View Articleニューヨークの建築、アートめぐり(4日目)
4日目はきょうこ氏とエンパイアステートビルの前で待ち合わせたが、僕らも彼女も遅刻してしまい、エンパイアステートビル展望台の列で合流することになった。「待ち合わせに間に合わない」と慌てていた妻も、相手の方が遅れるとわかり余裕が出たのか、スタバでカフェラテを購入。冷えた手を温めながら、僕らは建物へのんびり歩いていった。Empire State Building / Shreve, Lamb &...
View Articleニューヨークの建築、アートめぐり(5日目)
ニューヨークの朝は寒い。特にこの日は最低気温が-10℃とかなり冷え込み、外に出ると風が吹き付け、思わず手をポケットに引っ込めた。ニューヨークはこの日から始業する企業も多く、朝の人通りも多かった。僕らはPark Avenueを通ってGrand Central駅まで歩き、そこから6番線に乗りBrooklyn Bridge - City...
View Articleニューヨークの建築・アートめぐり(6日目)
ステファヌ・マラルメは「世界は一冊の書物に到達するために存在する」と言ったが、マンハッタンの章は数ページほど書き足さなくてはならない。と言いたくなるほどNYの建築とアートにどっぷり浸かった旅行もいよいよ最終日。日本に帰りたくない、仕事したくない、と駄々をこねても始まらないので、手始めに朝5時に起き、ホテルの部屋の実測をした。旅行などでホテルに泊まるときは、吉村順三だったか清家清(忘れた)に倣い、その...
View Article補章:「旅行の設計」のすすめ
今回の5泊7日間のNY旅行では安全かつ貪欲にアートと建築に触れ合うというコンセプトのもと、普段の旅行以上に綿密なスケジュールを組む必要があった。というのも、昨年の夏に行ったシンガポールでは、スケジューリングの甘さからリベスキンドのにょろにょろレジデンスや伊東豊雄氏の緑化ビルを見逃すなど苦い経験をしたのと、不穏な国際情勢のなかでの渡米に不安を抱く両親を安心させるという2つの目的があったためだ。そうした...
View Article伝説の論文
この話は僕が見聞きした事実に基づいているが、インターネットという媒体の都合上、論文著者の名は一部改変していることをあらかじめお断りしておく。僕がその論文のことを知ったのは学位論文執筆中の2011年、当時アルバイトで出入りしていた某設計事務所の社員で、僕の所属していた研究室OBでもあるA氏に論文のことで相談していた時のことだ。「河西建雄さんって人の論文、知ってる?」...
View Article千葉日帰り建築めぐり
「ホキ美術館に行きたい」動機はいたってシンプルだ。千葉市には社会人を始めて2年ほど住んでいたが、日々の仕事に忙殺され建築見学もろくにしないまま慌しく去ってしまった。しかしホキだけは見なければ建築に関わる者として恥ずかしい、そんな勝手な思いこみが日増しに強くなり、この間の連休を利用してようやく行くことにした。せっかく遠くに行くならその周辺の建築も見て回りたいというもの。そんなわけで今回も「旅行の設計」...
View Article「ガリガリ君値上げCM」の反響に対する違和感
SNS上で、とあるCMが話題を呼んでいる。ガリガリ君「値上げ篇」(60秒)なるほど、こんなやり方で値上げを宣言するとは面白い、と思ったが、どうも多くの人は純粋にこの態度について「賞賛」しているようだ。ガリガリ君値上げに、社員全員で謝罪!誠意がスゴイと大絶賛 −grapeeガリガリ君、社員総出の「お詫びCM」が大反響 「値上げ」逆手に動画再生10万回超える...
View Article台東区近代寺院散策 〜 妙経寺・善照寺・松源寺
週末に散歩がてら台東区にある寺を3つほど回ってきた。寺といっても戦後に建築家の手によって建てられた近代建築で、全てRC造のものだ。これらは新御徒町駅から徒歩圏内で、穏やかな気候の中、ぶらぶら散歩するにはちょうど良かった。妙経寺 / 川島甲士...
View Articleガンダム建築
「機動戦士ガンダム」を知っているだろうか。かれこれ30年以上続くアニメーションのシリーズで、内容は知らなくても名前くらいは聞いたことがあると思う。僕は「ガンダム」が結構好きだ。もっと言えばシリーズ全体、外伝的な小作品、小説や漫画も含めたコンテンツに中学、高校とどっぷり浸かり、プラモデルも相当な数を作るくらいには好きだ。作中では「モビルスーツ」と呼ばれるロボットに人が搭乗して戦うのだが、ハイテクなのに...
View Article阿佐ヶ谷書庫に行ったこと
5月某日、堀部安嗣氏設計による「阿佐ヶ谷書庫」(2013)の内覧会に行ってきた。今回は外観・内観ともに撮影不可という制約があったが、この建築の詳細は『書庫を建てる 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(松原隆一郎・堀部安嗣,2014,新潮社)につぶさに記録されているので、そちらを参照されたい。書庫を建てる:...
View Article瑠璃光院白蓮華堂に行ったこと
最近の専らの趣味といえば、建築マップを作成して実際に訪れることだ。僕が幾人かの友人と作ったマップには、数多の建築家が心血を注いで作り上げた建築が、まるで綺羅星のように光り輝いている。美術作品は美術館に行かなければ目にすることができないが、建築作品は、その多くが外観を見ることが許されており、また中に入ることができる場合も多い。これは歩いて鑑賞できる芸術、会いに行けるアイドルみたいなものだ。また優れた建...
View Article建築における「コンセプト」と「現実問題」について
昨晩、とある学生から下記のメッセージをいただいた。>>初めまして。私はある大学の学部1年の者です。突然失礼ですが、どうしても気になることがあるので質問させて下さい。私は三分一博志さんの建築に対する考え方(動く素材[太陽、水、風など]を発見し、調査し、研究し最終的に建築の中に落とし込む)がとても好きで、自分もこういう思想を元に建築をつくっていきたいなと思っていました。しかし、実際に三分一さんの作品であ...
View Articleラブドールと写真家 ―「LOVE DOLL × SHINOYAMA KISHIN」展トークイベント レポート
出典:WWD手渡された名刺には「芸術家」でも「アーティスト」でもなく、「写真家」という肩書きが控えめに書かれていた。「激写」という言葉を生み出し、時代とともに先端を走り続ける篠山紀信氏は、週刊誌のグラビアをはじめ「写真」を媒体に多岐に亘る被写体を撮り続け、活動開始から半世紀経った今でも現役というモンスター写真家だ。ごく最近にも原美術館で開催された「快楽の館」展(2017)では、ヌードの女性を原美術館...
View Article金沢建築弾丸ツアー(1日目)
「建築を見に行く」という行為は、著名な古刹・城郭・洋館でもない限り、建築の業界に携わる者でなければなかなか理解し難い行動かもしれない。いや、この業界にいても理解を示さない人は一定の割合で存在し、ましてや絨毯爆撃のように片っ端から目とカメラに収めていく人は中でも少数派だろう。僕にとって「建築を見に行く」ことは、先人に習うものづくりの基本的なスタンスである「観察する」こと以上に、アドレナリンが分泌するス...
View Article叛逆する平面―知られざる東京都慰霊堂
東京都慰霊堂をご存じだろうか。東京で暮らしていても縁遠い施設ゆえにその存在を認識している人はあまりいないんじゃないだろうか。かくいう僕も恥ずかしながら2、3年前まで所在すら知らなかった。最寄り駅は総武線両国駅で、両国国技館や江戸東京博物館から少々北に歩いた公園の中にある。公園といっても聖域の類なので園内は落ち着きがあり、普段から散歩をしたり寛ぐ人々を見かける。慰霊堂の設計者は伊東忠太で、RC造平屋建...
View Article製図室にて
午前3時、愛用のMacの画面が時間を告げる。無機質な白一色で整えられた製図室には、私と、同級生の加藤しかいない。といっても彼は寝袋にくるまっていびきをかいている。エスキス提出の前夜なのに、煮詰まっているのは私だけ。他の仲間は早々に切り上げて散っていった。孤独に耐え切れずTwitterのTLを眺めてみても、さすがにこの時間じゃTLの動きは鈍い。何かの拍子にフォローしてしまった、いつ仕事をしているか全く...
View Articleウロボロスの書
「万物は流転し、同じ軌道を繰り返し廻っているのであり、観者にとってはそれを百年見ていようと二百年見ていようと永遠に見ていようと同じことであることを銘記せよ」―マルクス・アウレリウス『自省録』第二章第十四節ガルシア・ホセ・ムヒカがタクナの街外れのかび臭い古書店で購入した海外の古い手稿を集めた本には、この世の全てが記述されているとされる奇妙な書物について書かれていた。以下にその内容を簡単に記述する。イス...
View Article看板建築を描くことについて
《蜷川家具店(1930)》2018年に入ってから、時間を見つけては看板建築の写真を撮り、立面図を起こす作業に没頭している。一体何を始めたのかと疑問に思っている方もいるかもしれないが、決して伊達や酔狂で描いている訳ではない。・・・と言いつつも、狂人は往々にして自分が正常だと信じて疑わないものであり、既に当人は酔狂の渦中にあるかもしれない。ここで少し頭を冷やしつつ今まで考えてきたことを振り返ってみたい。...
View Article藤森照信氏講演会「辰野金吾と東京駅」レポート
図1.東京駅(1914)2019年1月26日(土)10:30~12:00、東京駅構内の東京ステーションギャラリー2階にて連続講座「東京駅で建築講座」の第2回、藤森照信氏の講演会が催された。題して「辰野金吾と東京駅」。元東大藤森研OBの柳井良文氏の紹介によりこの回を受講する機会を得たので、ここにその講演会の記録をまとめることにする。(以降敬称略)...
View Article『看板建築 昭和の商店と暮らし』発売のお知らせ
2019年5月29日、『看板建築 昭和の商店と暮らし』という本が出版される。看板建築のみに焦点を当てた出版物としては藤森照信氏の『新版...
View Article旧坂本小学校解体前見学会レポート
先週末はTwitter近代建築界隈で話題になっていた台東区下谷にある旧坂本小学校の解体前の見学会に行ってきた。『旧坂本小学校』は下谷区入谷尋常高等小学校新校舎として1926年竣工、鉄筋コンクリート造3階建てで、設計者は阪東義三(東京市営繕課)、施工者は長谷川精二郎と伝えられる。*1「復興小学校」とひとくくりにされることも多いが、関東大震災以降の土地区画整理事業の対象区域外だったので正確には「改築小学...
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